共用部分の変更とは
エレベーターの設置、スロープの整備、外壁の大規模改修、共用廊下の拡幅――こうした共用部分の「形状または効用の著しい変更」を伴う工事は、従来の区分所有法では「特別決議事項」として、区分所有者総数・議決権総数の各4分の3以上の賛成が必要でした。建物の安全性維持や居住者のバリアフリーニーズに対応した改修が喫緊の課題であっても、この高い決議要件がネックとなり、計画が実現できないケースが多くありました。
要件緩和の内容
今回の改正では、共用部分の変更に係る決議要件について、目的に応じた緩和措置が導入されました。具体的には、バリアフリー化のための変更(スロープ設置、手すり設置、段差解消など)や、建物の瑕疵・老朽化に起因する修繕を目的とした共用部分変更については、決議の多数決要件が「4分の3以上」から「3分の2以上」に緩和されました(改正区分所有法・標準管理規約)。
なお、この緩和はあくまでも「出席者の3分の2以上」という要件であり、無条件に変更できるわけではありません。バリアフリー改修や瑕疵修繕という「客観的な理由」がある場合にのみ適用されます。通常の大規模修繕や共用設備の更新などは、引き続き4分の3以上の賛成が必要ですので注意が必要です。
| 【共用部分変更決議の要件(改正後)】 原則:出席者・出席者議決権の各3/4以上(一般的な共用部分の重大変更) 緩和①:出席者・出席者議決権の各2/3以上(バリアフリー化のための変更) 緩和②:出席者・出席者議決権の各2/3以上(建物の瑕疵・老朽化に起因する修繕目的の変更) |
バリアフリー改修推進への影響
この緩和措置は、特に築年数が古く、段差や狭い廊下が問題となっているマンションにとって大きな後押しとなります。居住者の高齢化が進む中、手すりやスロープの整備、エレベーター設置などのバリアフリー改修は、多くのマンションで急務となっています。
これまで「4分の3以上の賛成が得られず断念した」という経緯があるマンションでも、改めて計画を再検討する価値があります。理事会として、長期修繕計画にバリアフリー改修の視点を盛り込み、区分所有者の合意形成を計画的に進めていくことが望まれます。
注意点:何が「バリアフリー化」に該当するか
緩和措置が適用されるかどうかは、工事の目的が「バリアフリー化」または「瑕疵・老朽化に起因する修繕」に当たるかどうかにかかっています。管理組合として、工事の目的・必要性を明確に定義し、専門家(建築士・マンション管理士・弁護士)の意見を踏まえたうえで、議案書に「緩和要件の適用根拠」を記載することが重要です。
目的の定義が曖昧なまま3分の2の要件で議決しようとすると、後から「そもそも緩和要件に当たらない」として決議の効力が争われるリスクがあります。慎重かつ丁寧な議案づくりを心がけてください。
| 【理事会の実務チェックポイント】 長期修繕計画にバリアフリー改修・瑕疵修繕を明示的に位置づける 工事の目的・必要性を書面で明確に整理し、緩和要件の適用可否を専門家に確認する 議案書に「緩和要件の適用根拠」を記載し、区分所有者に事前説明する これまで断念したバリアフリー改修計画を改めて再検討する |
このシリーズはマンション管理士・行政書士としての立場から一般的な情報提供を目的としたものです。個々の管理組合の運営や個別事案への対応については、専門家への相談をおすすめします。
「管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック」過去の記事はこちら↓
第1回 「2つの老い」と法改正の背景 ―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―
第2回 総会の定足数・決議要件はどう変わったか―出席者ベースの多数決で意思決定が迅速化―
第3回 所在不明区分所有者の除外制度―決議の「見えない壁」を取り除く新しい仕組み―


