管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック 第3回 所在不明区分所有者の除外制度―決議の「見えない壁」を取り除く新しい仕組み―

所在不明問題の深刻化

相続が繰り返されて住所が把握できなくなった区分所有者、海外へ移住したまま連絡が取れなくなったオーナー、長年管理費を滞納したまま行方不明になった方――。全国のマンションで、こうした「所在等不明区分所有者」の問題が深刻化しています。

これまでの仕組みでは、こうした区分所有者も議決権の「分母」に含まれていたため、賛成票が多数集まっても特別決議が成立しないケースが続出していました。連絡が取れない人が増えるほど、まじめに管理に取り組む区分所有者の意思決定が阻害されるという、不合理な状況が続いていたのです。

新たに創設された「除外制度」

今回の改正では、こうした状況を解消するため、「所在等不明区分所有者の除外制度」が新設されました(標準管理規約67条の3)。この制度のポイントは、裁判所の決定を得ることで、所在不明の区分所有者を総会決議の「母数」から除外できるという点にあります。

除外が認められると、その区分所有者は総会の定足数や決議要件の計算から外れます。その結果、残りの参加者の意思に基づいてより円滑に意思決定を行えるようになります。特に、大規模修繕の実施、修繕積立金の改定、管理規約の変更など、長年滞っていた重要議案を前進させるうえで大きな効果が期待されます。

除外手続きの流れ

実際に除外制度を利用するには、一定の手続きを踏む必要があります。管理組合(理事長)が相当な努力を払って区分所有者の所在調査を行い(住民票の確認、登記簿の確認、郵便物の転送先調査など)、1年以上連絡が取れない状態が続いていることを記録・証明したうえで、裁判所に対して除外決定を申し立てます。

裁判所が申し立てを認め、除外決定を下すことで初めてその区分所有者を母数から外すことができます。なお、この手続きは法的な手続きを伴うため、弁護士やマンション管理士といった専門家の協力を得ることが強く推奨されます。

【除外手続きの大まかな流れ】
①管理組合が所在調査を実施(住民票照会・登記簿確認・郵便調査など)
②1年以上の連絡不能状態を記録・証明する書類を整備
③専門家(弁護士・マンション管理士)に相談のうえ、裁判所に申立て
④裁判所が除外決定を下す
⑤その区分所有者を総会の定足数・決議要件の計算から除外して総会を運営

理事会として今からできる準備

除外制度をいざ活用しようとする場合、日頃から区分所有者名簿を最新の状態に保っておくことが不可欠です。転居・相続・売買などの際に名簿を更新し、連絡先情報を管理会社と連携して管理しておきましょう。

また、管理費の長期滞納者や通知が届かない区分所有者については、早い段階から記録を残しておくことが肝要です。「気づいたら何年も連絡が取れない」という状態にならないよう、定期的な所在確認と記録管理の体制を整えることが、将来の除外手続きを円滑に進める基盤になります。

【理事会の実務チェックポイント】
区分所有者名簿を最新状態に保つ(転居・相続・売買の都度更新)
管理費滞納者・通知未到着者の記録を継続的に残しておく
除外申立てが必要になった場合に備え、弁護士・マンション管理士と事前に相談しておく
除外後の総会運営ルールを規約・細則に明記しておく

 このブログシリーズはマンション管理士・行政書士としての立場から一般的な情報提供を目的としたものです。個々の管理組合の運営や個別事案への対応については、専門家への相談をおすすめします。

「管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック」過去の記事はこちら↓
第1回 「2つの老い」と法改正の背景 ―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―
第2回 総会の定足数・決議要件はどう変わったか―出席者ベースの多数決で意思決定が迅速化―