管理組合理事会のための2026年法改正対応ガイドブック 第7回 管理不全専有部分・財産管理制度への対応―ゴミ屋敷・放置住戸を管理組合は動けるか―

「管理不全専有部分」問題の深刻化

高齢化や孤立化が進む現代のマンションでは、特定の住戸が著しく荒廃するケース(いわゆるゴミ屋敷化)や、区分所有者が施設入居・死亡等によって長期間不在となり、放置状態になった住戸の問題が増えています。こうした「管理不全専有部分」は、害虫の発生や悪臭の拡散など、周囲の住戸への直接的な被害をもたらすだけでなく、マンション全体の資産価値低下にも直結します。

しかし従来の法制度では、専有部分はあくまでも個人の所有物であり、たとえ管理不全であっても管理組合が直接介入することは非常に難しい状況でした。

新設された財産管理制度

今回の改正では、こうした状況に対応するため、「管理不全専有部分・管理不全共用部分に対する財産管理制度」が創設されました(標準管理規約67条の4・67条の5)。この制度のポイントは、管理が著しく不適当な専有部分や所在不明者が所有する共用部分について、利害関係者(管理組合を含む)が裁判所に申し立て、裁判所が管理人を選任して管理を命じることができるというものです。

具体的には、①ゴミ屋敷化した専有部分の清掃・害虫駆除、②長期放置住戸の保全管理、③相続人不存在・所有者不明の専有部分の管理、などの場面での活用が想定されています。

なりすまし問題への対応も

もう一つ、今回の標準管理規約の改正で注目すべき点が「役員就任時の本人確認」に関するコメントの追加です。2025年には、首都圏のマンションで大規模修繕工事の施工会社の社員が住民になりすまして修繕委員会に参加し、自社に有利な形で会議を誘導しようとした事件が発覚しました。

この事案を受け、改正標準管理規約のコメントでは「管理組合役員・専門委員就任時の本人確認を推奨する」旨が明記されました。区分所有者であることの確認(登記事項証明書、売買契約書の写しなど)を徹底することが求められています。

【財産管理制度の適用が想定される場面】
・特定の住戸がゴミ屋敷化し、周囲の住戸や共用部分への被害が生じている場合
・区分所有者が施設入居・死亡等で長期不在となり、専有部分が放置されている場合
・相続が発生したが相続人が不明で、専有部分の管理が滞っている場合
・所在不明区分所有者が所有する専有部分が著しく荒廃している場合

理事会としての対応

まず、管理規約に財産管理制度の活用手続きに関する規定を盛り込むことを検討しましょう。標準管理規約67条の4・67条の5に沿った条文を整備しておくことで、いざという場面での迅速な対応が可能になります。

また、日常的なパトロールや管理員による巡回を通じて「要注意住戸」の早期把握に努めることも重要です。問題が深刻化してから動くのではなく、早い段階で記録を残しながら段階的に対応していく姿勢が、後の法的手続きを円滑にします。

【理事会の実務チェックポイント】
・管理規約に財産管理制度の活用手続き規定を整備する
・要注意住戸の早期把握のため、定期巡回・記録の仕組みを設ける
・役員・専門委員の就任時に本人確認書類の提出を求めるルールを設ける
・問題が発生した場合の弁護士・マンション管理士への相談ルートを事前に確保する

 このシリーズはマンション管理士・行政書士としての立場から一般的な情報提供を目的としたものです。個々の管理組合の運営や個別事案への対応については、専門家への相談をおすすめします。

「管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック」過去の記事はこちら↓

第1回 「2つの老い」と法改正の背景 ―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―
第2回 総会の定足数・決議要件はどう変わったか―出席者ベースの多数決で意思決定が迅速化―
第3回 所在不明区分所有者の除外制度―決議の「見えない壁」を取り除く新しい仕組み―
第4回 共用部分変更決議の要件緩和―バリアフリー化・修繕が進めやすくなった―
第5回 国内管理人制度の創設―海外在住オーナー増加時代の新たなルール―
第6回 建替え・マンション再生の新ルール―老朽マンションに現実的な「出口」を―