管理組合理事会のための2026年法改正対応ガイドブック 第5回 国内管理人制度の創設 ―海外在住オーナー増加時代の新たなルール―

国際化するマンション所有

近年、日本のマンション市場の国際化が急速に進んでいます。東京や大阪をはじめとする都市部では、海外投資家や在外邦人が区分所有権を取得するケースが増加しており、区分所有者の中に「国内に住んでいない人」が含まれるマンションは決して珍しくなくなりました。しかし、国外に居住する区分所有者との連絡は困難を極め、管理費の滞納、総会通知の不達、緊急時の対応不能など、管理組合の運営に支障をきたすケースが多発していました。

国内管理人制度とは

こうした問題に対応するため、今回の改正区分所有法では「国内管理人制度」が新たに創設されました(改正区分所有法6条の2第1項、標準管理規約31条の3)。この制度は、区分所有者が国内に居住していない場合(法人の場合は、本店または主たる事務所が国内に設けられていない場合)に、管理組合と区分所有者との連絡を円滑に行うため、国内の居住者を「国内管理人」として選任できるとするものです。

国内管理人は、保存行為(軽微な修繕・現状維持)の実施や、総会における議決権の行使など、一定の権限を持ちます。また、管理規約に定めることで、国外居住の区分所有者に国内管理人の選任を義務付けることも可能となりました。

標準管理規約での対応

標準管理規約では今回の改正により、理事長への届け出などに関して「国内管理人の設置についての定め」が設けられました(31条の3)。国内管理人の選任を義務づける場合の規約例もコメントに示されています。

実務上は、まず自分たちのマンションに国外居住の区分所有者がいるかどうかを把握することが第一歩です。管理会社から区分所有者名簿の提供を受け、現住所が海外となっている方の有無を確認しましょう。

【国内管理人の主な権限と役割】
・管理組合からの通知・書類の受領管理費・修繕積立金等の支払い代行(管理規約に定めた場合)
・保存行為(軽微な修繕・現状維持)の実施総会における議決権の行使(委任状による場合を含む)
・緊急時の連絡・対応の窓口

理事会としての対応

まず管理規約に国内管理人制度の規定を盛り込むことを検討しましょう。国外居住者が一定数いるマンションでは、「国内管理人の選任を義務づける条文」を設けることが特に重要です。管理会社と相談しながら、どのような規定を設けるかを検討し、次回の総会議案として提案することをお勧めします。

また、既存の国外居住区分所有者に対しては、制度の内容を丁寧に説明し、国内管理人の選任を働きかけることが必要です。書面による通知(日本語版と外国語版の両方を用意すると効果的)で制度の趣旨を伝え、指定期日までに国内管理人の届け出を行うよう依頼しましょう。

【理事会の実務チェックポイント】
・区分所有者名簿で国外居住者の有無を確認する
・管理規約に国内管理人制度の規定(義務化条文を含む)を盛り込む
・国外居住区分所有者に制度の説明書面を送付(必要に応じ多言語対応)
・国内管理人選任届の書式を管理会社と連携して整備する

 このシリーズはマンション管理士・行政書士としての立場から一般的な情報提供を目的としたものです。個々の管理組合の運営や個別事案への対応については、専門家への相談をおすすめします。

「管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック」過去の記事はこちら↓
第1回 「2つの老い」と法改正の背景 ―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―
第2回 総会の定足数・決議要件はどう変わったか―出席者ベースの多数決で意思決定が迅速化―
第3回 所在不明区分所有者の除外制度―決議の「見えない壁」を取り除く新しい仕組み―
第4回 共用部分変更決議の要件緩和―バリアフリー化・修繕が進めやすくなった―