管理組合理事会のための2026年法改正対応ガイドブック 第6回 建替え・マンション再生の新ルール ―老朽マンションに現実的な「出口」を―

建替えが進まない現状

老朽化が進んでいるにもかかわらず、建替えが実現したマンションは全国で累計わずか282件程度(国土交通省調べ)に過ぎません。その最大の壁が「各5分の4以上」という建替え決議の高い多数決要件でした。耐震性に問題があっても、1割強の区分所有者が反対または無関心であれば、建替え計画は頓挫してしまいます。

建替え要件の緩和

今回の改正では、建替え決議の多数決要件について、一定の客観的事由がある場合に限り、「5分の4以上」から「4分の3以上」に緩和されました。緩和が認められる5つの客観的事由は以下の通りです。

【建替え決議要件が緩和される5つの事由】
①耐震性の不足(耐震基準への不適合)
②火災に対する安全性の不足
③外壁等の剥離により周辺に危害を生ずるおそれ
④給排水管等の腐食等による著しい衛生上の危害のおそれ
⑤バリアフリー基準への不適合

これらのいずれかに該当することが認められれば、出席者・出席者議決権の各4分の3以上の賛成で建替えが可決できます。耐震診断の結果が基準を下回っているマンションなど、緩和要件に該当するかどうかを専門家に確認してみる価値があります。

新たなマンション再生手法の導入

今回の改正では、従来の「建替え」に加え、新たなマンション再生手法として「建物更新(一棟リノベーション)」「建物取壊し」「敷地売却」「建物取壊し敷地売却」が法定されました。

特に「建物更新」は、建物の構造上主要な部分の効用を維持・回復するために共用部分の形状を変更し、それに伴い全専有部分の形状・面積・位置関係を変更する、いわゆる「一棟リノベーション」を指します。これにより、建替えほど大規模ではなくとも、建物を根本から刷新するという選択肢が加わりました。「建替えかそのまま放置か」という二択から、より柔軟な選択が可能になります。

団地型マンションの建替えも円滑化

複数棟からなる団地型マンションの建替えについても、今回の改正で手続きが合理化されました。改正後は、議決権の過半数を有する団地建物所有者が出席し、出席者の議決権の4分の3以上の多数決で建替え決議が可能となりました。

また、建替え決議が成立した場合、賃借人に対して6カ月の猶予期間を設けたうえで契約終了を求めることができるようになりました。これまでは賃借人保護の観点から多額の立退料や長期交渉が必要でしたが、一定の手続きを経ることで法的な強制力を持って対応できるようになりました。

【理事会の実務チェックポイント】
・耐震診断の実施状況を確認し、未実施の場合は早急に計画する
・5つの緩和事由のいずれかに該当するか専門家(建築士・弁護士)に確認する
・「建替え」以外の再生手法(建物更新・敷地売却等)についても情報収集する
・過去に建替え計画が断念されたマンションは改めて可能性を検討する

 このシリーズはマンション管理士・行政書士としての立場から一般的な情報提供を目的としたものです。個々の管理組合の運営や個別事案への対応については、専門家への相談をおすすめします。

「管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック」過去の記事はこちら↓
第1回 「2つの老い」と法改正の背景 ―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―
第2回 総会の定足数・決議要件はどう変わったか―出席者ベースの多数決で意思決定が迅速化―
第3回 所在不明区分所有者の除外制度―決議の「見えない壁」を取り除く新しい仕組み―
第4回 共用部分変更決議の要件緩和―バリアフリー化・修繕が進めやすくなった―
第5回 国内管理人制度の創設―海外在住オーナー増加時代の新たなルール―