管理組合理事会のための法改正対応ガイドブック 第1回 「2つの老い」と法改正の背景―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―

【連載全10回】

はじめに

 このたびの連載は、マンション管理組合の理事会メンバーの皆さまに向けて、2026年4月1日に施行された改正区分所有法と、2025年10月17日に改正されたマンション標準管理規約の内容を、実務目線でわかりやすく解説するものです。全10回にわたり、区分所有者への説明や管理会社との交渉に役立てていただける情報をお届けします。第1回は、まず改正の「背景」と「全体像」を把握していただくことを目的としています。

「2つの老い」という社会問題

 今回の法改正の根底にあるのは、わが国のマンションが抱える「2つの老い」という深刻な社会問題です。一つ目は「建物の老朽化」です。国土交通省のデータによれば、全国のマンションストック数は約713万戸(2024年末時点)にのぼり、そのうち築40年を超えるものが100万戸以上に達しています。20年後にはその数が4倍以上に増加すると見込まれています。二つ目は「居住者の高齢化」です。管理組合の役員の担い手が不足し、総会の出席者が集まらず、肝心な議決が取れないという事態が全国各地で続出しています。

 さらに、海外投資家や在外邦人による区分所有権の取得が増え、管理費の滞納や連絡不能といった問題も顕在化しつつあります。こうした複合的な課題が、今回の法改正を強く後押しした背景となっています。

23年ぶりの大改正

 今回の区分所有法改正は、2025年5月に国会で可決・成立し(令和7年法律第47号)、2026年4月1日から施行されました。前回の大規模改正は2002年(平成14年)でしたので、実に約23年ぶりの抜本的な見直しとなります。改正の目的は大きく「管理の合理化」と「再生の現実化」の2本柱です。

 「管理の合理化」とは、これまで総会の議決要件が厳格すぎたために意思決定が停滞していた問題を解消し、マンションが必要な修繕や設備更新を適時に行えるようにすることです。「再生の現実化」とは、老朽化が進んでも建替えや売却が進まない現状を打破するために、マンション再生に関する多数決要件を緩和し、新たな再生手法(建物更新・取壊し・敷地売却)を導入することです。

標準管理規約の改正との関係

 区分所有法が国の法律として「基本的な枠組み」を定めるのに対し、マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」)は国土交通省が示す「管理規約のひな形」です。2025年10月17日に改正・公表された標準管理規約は、改正区分所有法の施行に合わせた内容となっています。重要なのは、改正区分所有法は2026年4月1日をもって全マンションに自動的に適用される一方で、各マンションの管理規約は総会決議によって改正する必要があるという点です。

 もし管理規約の内容が改正区分所有法に抵触する場合は、その部分は施行日をもって効力を失います(改正法附則2条3項)。規約と法律の内容が食い違ったままでは、総会運営に混乱が生じかねません。早急な規約の見直しが求められています。