これまでの問題点
マンションの総会では、修繕積立金の値上げや大規模修繕の実施、管理規約の改正など、住民生活に直結する重要事項が議決されます。しかしこれまでの区分所有法では、特別決議(規約の変更や共用部分の重大な変更)について「区分所有者総数および議決権総数の各4分の3以上」の賛成が必要とされていました。
この要件では、総会に出席しない区分所有者や、連絡が取れない所在不明の区分所有者も「分母」に含まれるため、居住している区分所有者のほぼ全員が賛成しても、肝心な議案が否決されてしまうケースが各地で相次いでいました。「何度議案を出しても否決される」という閉塞感が、マンション管理の大きな悩みでした。
改正後の決議要件
今回の改正では、特別決議についても「出席した区分所有者およびその議決権の4分の3以上」で可決できるよう変更されました(標準管理規約47条)。つまり、議決の母数が「区分所有者総数」から「総会出席者」へとシフトしたことになります。これにより、総会に出席しない無関心な区分所有者や所在不明者が意思決定を事実上ブロックしてしまう状況が是正されます。
一方で、定足数(総会を成立させるための最低出席数)については若干厳格化されました。改正前は「議決権総数の半数以上」でしたが、改正後の標準管理規約では「過半数(51%以上)」と規定されています。さらに特別決議の場合は「区分所有者数および議決権の各過半数」の出席が求められます。
| 【改正前後の比較(特別決議の場合)】 【改正前】成立要件:区分所有者総数の1/2以上が出席、可決要件:区分所有者総数・議決権総数の各3/4以上 ↓ 【改正後】成立要件:区分所有者数・議決権の各過半数が出席、可決要件:出席者・出席者議決権の各3/4以上 |
普通決議への影響
普通決議(管理費の予算承認、役員選任など)については、定足数が「議決権総数の過半数」となり、改正前の「半数以上」から若干引き上げられました。日常的な総会運営において、これまでは辛うじて定足数を満たせていたマンションでは、委任状・議決権行使書の取りまとめを今まで以上に丁寧に行う必要があります。
また、総会招集通知の内容についても重要な変更があります。改正後は「すべての議案の要領」を招集通知に記載することが必須となりました。これまで「詳細は当日説明」というスタイルで進めていた管理組合では、準備の仕方を見直す必要があります。事前に十分な情報を区分所有者に提供し、当日の「寝耳に水」による紛糾を防ぐことが重要です。
緊急総会の招集期間も変更
緊急時の総会招集期間についても変更があります。改正前は「最短5日前」まで短縮することができましたが、改正後は「最短1週間前」に見直されました。漏水や設備故障など緊急対応が必要な場面でも、最低でも1週間の余裕を確保しなければなりません。
これは「事前に十分な情報を提供する」という改正の趣旨を反映したものですが、実務的には対応の速さが求められる場面でハードルが上がります。理事会として、「緊急時の意思決定フロー」(理事会の専決事項の範囲、事後承認の手続きなど)を改めて整備しておくことが急務です。
| 【理事会の実務チェックポイント】特別決議の可決要件が「出席者の3/4以上」になったことを区分所有者に周知する定足数が「過半数」となったため、委任状・議決権行使書の確保活動を強化する招集通知には「すべての議案の要領」を漏れなく記載する緊急時の意思決定フローを規約・細則で整備・確認しておく |
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第1回 「2つの老い」と法改正の背景 ―なぜ今、区分所有法が大きく変わったのか―🔗


